RCI GRAFFITI 〜RCIの足跡〜

1998年9月30日発行 クアトロ スタジオーニ7より 


1984年
 桜井淑敏、ホンダF1チーム総監督に就任。
1985年
 ウィリアムズ・ホンダは、ケケ・ロズベルグ、ナイジェル・マンセルを擁し、年間4勝を挙げる。
1986年
 ウィリアムズ・ホンダは、ネルソン・ピケ、ナイジェル・マンセルを擁し、念願のコンストラクターズ・チャンピオンを獲得。
1987年
 ホンダはウィリアムズに加え、ロータスにもエンジン供給を開始する。ウィリアムズにピケ、マンセル、ロータスにアイルトン・セナ、中嶋悟を擁し、第7戦イギリスGPで1−2−3−4フィニッシュを達成。この年ホンダは、コンストラクターズ&ドライバーズの両チャンピオンを獲得し、完全制覇を成し遂げる。そして桜井淑敏は、翌年に向けて、アイルトン・セナ、アラン・プロストを擁した史上最強チーム、マクラーレン・ホンダ体制を確立する。

1988年
 2月、桜井淑敏はホンダF1チーム総監督を勇退し、6月、本田技術研究所取締役を辞任。そして7月、品川区池田山にオフィスを構え、RCI設立の準備を開始する。その手始めとしてイギリスGPへ赴き、F1全チームに交渉して、独占取材及びグランプリ撮影許可を得る。8月からは、世界初の『オリジナルF1ビデオ全7巻』の制作をスタート。ベルギーGPの撮影をはじめ、チームファクトリー訪問やF1ドライバーのロングインタビューを行うため、世界各地を飛び回る。一方、国内においても桜井は、新聞、雑誌、テレビ等を通して、空前の好景気に沸く日本の文明度と文化度のアンバランスを訴え、「F1は日本にとって現代の黒船だ」と直言。F1文化をキーワードに新文化創造をめざすというRCI設立の意義を説いた。
 9月1日、第1次会員募集開始と同時に全国から申し込みが殺到。立ち上がったばかりの会員事務局は嬉しい悲鳴を上げることになる。本格的な活動を翌年に控え、完成したての『オリジナルF1ビデオ』をメンバーに順次配布する一方、RCIスタッフは世界最新鋭の国際サーキット「オートポリス」建設予定地を視察。そのコンセプトづくりに集中する。
 なお、F1界においては、この年マクラーレン・ホンダが16戦中15勝するという偉業を成し遂げ、セナが初のチャンピオンを獲得。日本のF1人気が爆発した。

8月◆RCI設立
◆オープニングパーティー開催(原宿キーウエスト)
 各界の著名人やジャーナリストを招いた盛大なパーティーを開く。
9月◆会員募集開始
12月◆『オリジナルF1ビデオ』全7巻完成


1989年
 初戦ブラジルGPの開幕と同時に、グランプリの感動のドラマを3日後に届けるという、最速のF1レポート「レーシングコミュニケーション」がスタート。4月30日、全国各地から750名余りのメンバーを集めて、第1回全国メンバーズミーティングを開催。そして5月には、RCIが企画し、桜井淑敏が同行するという本格的なF1観戦ツアー、「モナコGP観戦ツアー」を実施。さらにはRCIならではのオリジナル商品の発表、会報『CHALLENGE』やオリジナルサウンドテープの発行など、メンバーズクラブの実態が次第に明らかになる。特に『CHALLENGE 1』における桜井のメッセージは、RCI設立の意図を明確に表現したものとして、相次いで発行された桜井の著書と並び、メンバーに衝撃を与える。
 また、日本GPにおいては、メンバーの宿泊施設を千名分確保し、前夜祭パーティーの開催やRCIブースの出店など、メンバーとのふれあいも大切にする姿勢を打ち出した。
 昭和天皇崩御、天安門事件、ベルリンの壁崩壊など内外で大きな時代の変化が感じられる中、F1におけるチャレンジングスピリットを出発点に、「ほんもの」と「グローバル」を追い求める「新文化創造」の第一歩が刻まれた。

3月◆レーシングコミュニケーション、スタート
4月◆オリジナルビデオ 『キュリオシティ・シリーズ』全10巻発表
 メンバーからの、もっと見たい、もっと知りたいという要望に応え、『オリジナルF1ビデオ』全7巻を補完するビデオを制作した。
◆第1回全国メンバーズミーティング開催
(東京ベイ・ヒルトンインターナショナルホテル)
 一時間に及ぶ桜井の熱い語りに会場は拍手喝采で沸く。各界のゲストのスピーチ、シャンパンでの乾杯、近藤等則氏のライブなど盛大なパーティーの中で、いよいよ動き出したRCIへの期待はいやがおうにも高まった。
5月◆モナコGP観戦ツアー実施
 F1文化の真髄に触れようと、日本で初めてロウズモンテカルロホテル泊を取り入れたRCIのモナコGP観戦ツアー。数あるF1観戦ツアーの中でも最上級のツアーとして定着する。
6月◆エリアコーディネーター募集
 地域ごとのメンバー相互の共感と連帯をめざして募集したエリアコーディネーターに100名以上のメンバーが応募。翌年の全国エリアミーティングの開催に向けて尽力する。
7月◆フランス&イギリスGP観戦ツアー実施
◆オリジナルブランド「VALORE」発表
 新しい文化を担うものづくりとしての第一弾は、ドライビングブルゾン、Tシャツ、キーホルダー、ライターなど。
8月◆会報『CHALLENGE』創刊
◆保存版カラーメモリアルシート発行
◆オリジナルサウンドテープ 『Spiritual Wind』リリース
 『CHALLENGE』は、シックなモノトーンを基調としたメッセージマガジンとしてスタートした。桜井淑敏の巻頭エッセー、F1界の主要人物をはじめ、各界のチャレンジングピープルのインタビューや対談など、独自の内容を掲載、年2回のペースで93年まで計10冊を発行。また、B4サイズ・10枚セットのカラーフォトでF1の感動を鮮やかに再現したメモリアルシート、F1サウンドとジャズをクロスオーバーさせたリリシズム溢れるオリジナルサウンドテープを制作し、それぞれ年2回発行する。
 桜井淑敏著『ファーステスト・ワン』発行
10月◆VALORE 第二弾発表
 サーキットコート、キャップ、GPチケットホルダー、エンブレムバッジなど。
◆日本GP・RCIブース出店
 グランドスタンド裏にRCIブースを出店。オリジナル商品の展示販売を行う一方、メンバー同士の出会いの場ともなる。メンバー限定の公式タイムリザルトの配布は、特に好評を得る。
◆日本GP前夜祭・RCIメンバーズディナー開催
(名古屋キャッスルホテル)
 総勢550名が参加。豪華な食事、多彩なゲストのトーク、F1クイズなど、決勝日前夜のアットホームな大パーティーとなる。
11月◆オーストラリアGP観戦ツアー実施
 「安く・気軽に・でもF1観戦には妥協を許さず」のこのツアーは、95年まで毎年恒例の観戦ツアーとして好評を得る。
 桜井淑敏著『ゼロからの挑戦』発行


1990年
 前年の鈴鹿でのセナ・プロスト接触問題が年を越してもつれ、F1への注目度は一層高まっていく。日本中がF1ブームに沸く中、RCIは歴史から学ぶ姿勢や自分なりの哲学を持つことの重要性を訴え、「アーティスティック・アクティブ・ライフ」や「サロン文化」の提唱など、独自のスタンスを築いていく。
 続々と発表されるオリジナル商品や、オプショナル特典「グランプリ・リアルタイムFAXサービス」の開始、新たにRCIニュース『VIVID』を発行するなど、年間特典もさらに充実。また、第2回全国メンバーズミーティングの他、全国10ヶ所で開催されたエリアミーティングは、各地のメンバーの協力のもと、それぞれが個性豊かでアットホームな雰囲気をつくり出し、メンバーとの出会いとふれあいを深める集いとなった。
 秋にはオートポリスがオープンし、ネルソン・ピケのドライブによるF1マシンの咆吼が轟いた。
1月◆第1回エリアミーティング開催
 桜井とRCIスタッフが休むことなく全国10ヶ所を巡るミーティングは、福岡からスタートし、広島、大阪、名古屋、札幌、新潟、仙台、東京2会場に続き、横浜でフィナーレを迎えた。
3月◆北海道スノーフェスティバル開催
 メンバー同士が集まって何かをを楽しむという行動型アクティビティの先駆けとなるスキーツアーを開催。
◆グランプリ・リアルタイムFAXサービス、スタート
 F1GP全戦の予選・決勝の公式結果をわずか1時間後にFAXするオプショナル特典を開始。
◆RCIニュース『VIVID 1』発行
 『VIVID』はF1情報に限らず、アップ・トゥ・デイトな話題を掲載するカラーニュースペーパーとして、93年まで年3回のペースで発行された。
◆VALORE 第3弾発表
 クルージングブルゾン、グランプリワールドスカーフ
5月◆VALORE 第4弾発表
 アーバインフラットバッグ、カードケース
8月◆VALORE 第5弾発表
グランプリフィールドジャケット
9月◆第2回全国メンバーズミーティング開催(エムザ有明)
 多彩なゲストが参加したトークショーは、「F1からの発想」、「激動の時代からの発想」という二部構成により、これからの時代へのヒントが発せられた。
◆ポルトガルGP観戦ツアー実施
◆アイルトン・セナ オフィシャルカレンダー 発売
 セナとRCIとの共同監修による、世界初のセナのオフィシャルカレンダーの1作目。以後、多くのファンに親しまれ現在に至る。
10月◆日本GP・RCIブース出店
ブースの出店位置を1コーナーD席裏に移動。ブース横のスペースを確保し、ドリンクサービスや伝言板の設置も加わり、メンバーの待ち合わせや憩いの場として活用されるようになる。
◆RCI設計・監修のサーキット「オートポリス」オープン


1991年
 湾岸戦争勃発に始まり、ソビエト連邦崩壊で締めくくられた歴史的なこの1年。しかし、日本では、バブル経済の崩壊と言われながらもその実感は薄く、旧態依然とした国政のもと、先のヴィジョンが見えないまま迷走を続けていた。そんな折、RCIは、メンバー同士が自由に語り合うアクティビティ「テーマディスカッション」をスタート。新文化創造の道のりは険しいものの、「とにかく自分たちから始めなければ」というひとりひとりの思いが原動力となり、全国各地で熱い議論が始まった。
 会報誌『CHALLENGE』で取り上げる内容もますます本質的なものへと深まり、チャレンジング・スピリットに加え、「愛」と「生命」が大きなテーマとして登場する。ゲストとの対談も充実し、スタッフやメンバーのエッセイも掲載。また、オーストラリアGP観戦ツアーは、総勢340名という史上最大規模の旅となった。
 本田宗一郎の死去、中嶋悟の引退など、日本におけるF1の歴史が刻まれていく中、「ひとしずくの、実り」と題して開催された第3回全国メンバーズミーティングは、現在と未来を見据え、これからの時代を切り開いていく意志に溢れた集いとなった。

3月◆「テーマディスカッション」スタート
全国250名のメンバーが21チームに分かれ、月1回のペースで会合。設定された4テーマ、「新・文化発信サーキットの誕生」、「日本人・F1チャンピオンの誕生」、「新・精神貴族の誕生」、「ネオ・ルネサンスの誕生」を議論し、桜井とカセットテープのやり取りでコミニュケーションを図る。
◆アメリカGP観戦ツアー実施
 湾岸戦争の最中、あえてツアーを敢行。
◆レーシングコミュニケーションがリニューアル
 予選レポートを大幅に拡充、データも増えるなど、情報の質と量を充実させた。
7月◆「桜井淑敏のF1ライブスポット」開始
 ドイツGPより、ダイヤルQ2を利用したオプショナルサービスを開始。以後、92年シーズン終了までの間、桜井の肉声によるテレホン解説が行われた。
 中嶋悟引退発表
8月◆新サーキットアイテム
 「RCIスタッフブルゾン」発表
◆オリジナルサウンド、CD化
 オリジナルサウンドテープは、5作目からF1サウンドと各国の音楽を融合したCDとなる。
 本田宗一郎死去
9月◆セナのナシオナル・キャップ発売
 今なお多くのファンに愛用されるナシオナル・キャップをブラジルから直輸入し、日本での独占販売をスタートする。
◆スペインGP観戦ツアー実施
 桜井淑敏著『我が友、アイルトン・セナ』発行
10月◆オーストラリアGP観戦ツアー実施
 総勢340名が参加した史上最大のグランプリ観戦ツアーは現地でも後々まで語り草となる。決勝日は生憎の雨となり参加者は全員ずぶ濡れ。それでもF1チーム合同パーティーに全員で乗り込むなど、大いに盛り上がりを見せた。
12月◆第3回全国メンバーズミーティング開催
 (横浜エクセレントコースト)


1992年
 88年以降低迷を続けていたウィリアムズがアクティブサスペンションの導入で復活。F1マシンはハイテクの頂点を極める。そしてこの年、脅威の新人ミハエル・シューマッハーがフル参戦する一方、ホンダが撤退を発表。F1界に新時代の兆しが見え始める。
 東西の冷戦構造の終結によって東欧諸国の解体が相次ぎ、世界は新秩序形成に向けて急速に動き出す。また日本では、東京佐川急便事件の発覚で政治不信が高まる中、複合不況の煽りを受けた企業は経営のリストラを進め、個人消費は落ち込むなど、社会全体が漠然とした不安を抱えるようになる。
 すべてが不透明な時代にあって、RCIは「RCIフロンティア」と銘打って、ひとりひとりの価値観の再創造と、自らが主人公となって考える勇気を持とうとメッセージする。年末に行われた第4回全国メンバーズ・ミーティングのタイトル、「変身/何を終わらせ、何を始めるのか」の言葉に集約された1年だった。

1月◆第2回エリアミーティング「RCIメンバー懇親会」開催
 桜井とメンバーのフェイス・トゥ・フェイスのふれあいをテーマとし、信頼と親しみ溢れる会が全国10ヶ所で開催された。
4月◆メンバーズ・アンケート実施
 メンバーのライフスタイルに関する意識調査を中心に4ページに及ぶアンケートを実施。その結果は8月発行の『CHALLENGE 7』に掲載された。
7月◆オートポリス・F3000観戦ツアー実施
 経営が行き詰まったオートポリス。しかし、ツアーはハウステンボス訪問やカート体験走行など盛りだくさんで、「ネルソン・ピケ展」に現れたピケがパーティーに飛び入り参加するなど嬉しい出来事があった。
8月◆オリジナルブランド『MONACO 50』発表
 モナコGP50周年を記念して、新しいグランプリカジュアルウエアを提案。スポーツジャケット、ベスト、レインコート、ブルゾン他を発表。
9月◆イタリアGP観戦ツアー実施
 ホンダ、F1撤退を発表
10月◆テーマディスカッション 第1回全国ミーティング開催
 RCIオフィスに各チームの代表として全国から40名のメンバーが参加。桜井と膝をつき合わせた議論は白熱し、翌朝まで語り明かす。
12月 ◆第4回全国メンバーズミーティング開催
 (横浜エクセレントコースト)


 1993年
 バブルに見た夢が幻と消えてもなお、右上がりの経済成長を追い求める経済界。その一方で『清貧の思想』が大ベストセラーとなり、新興宗教が勢いを増すなど、未だ精神的打撃を克服できずにいる日本の社会。しかし、RCIはこの年、そんなムードを払拭すべく、「地球と人類の未来」というより大きな命題へと踏み込んでいった。
 会報誌上で様々な「未来論」を展開。『地球交響曲』監督・龍村仁氏と「ガイアの心」を語り合い、毎日新聞の岸井成格氏を相手に「世界の変革」を見つめ、そしてアイルトン・セナからは「神」や「地球」についての想いと共に、「未来へのメッセージ」とも言うべき貴重な言葉を得る。また、テーマディスカッション活動においても、全国統一テーマ「未来地図を描く」を掲げて対話が進み、『TD通信』を通じてその内容を発表。そうした中、桜井は、日本の「自律」と「自立」を訴えると共に、ひとりひとりの意識の目覚めと、生命が求めるものに素直になることの大切さを説いた。こうした一連の未来論から見えてきたものは、「意識革命」と「生態的文明の構築」の必要性だった。
 一方、FIAは安全性確保と開発費抑制の名目でアクティブサスペンションの使用をこの年限りで禁止。F1のハイテク化に歯止めをかけるという後退的な姿勢を示した。

3月◆オリジナルブランド『MONACO 50』 春夏コレクション発表
 ポロシャツ、スウェットパーカー、キーホルダー、プラグケースなど。
4月◆テーマディスカッション 新体制でスタート
 3年目を迎えたテーマディスカッションは、21チームを15グループに再編成し、進行役として各グループ1〜2名のディスカッションホストを指名する。RCIの方向性「未来論」に呼応して、初の全国共通テーマ「未来地図を描く」を設定。
6月◆カナダGP観戦ツアー実施
7月◆マルボロ発行・公式グランプリガイドブック 93年版 限定販売
 F1関係者のみに配布され、非売品であったマルボロ・グランプリガイドブックをRCIメンバー限定で販売することが可能になった。
8月◆カラーメモリアルカード発行
 それまでのメモリアルシートは、この年から12枚セットのメモリアルカードに替わる。
◆オリジナルサウンドCD 『UN・NAMED PLANET』リリース
 サウンドCDはコンセプトを一新。深井克則氏のリリカルなピアノソロアルバムを制作する。
◆ベルギーGP観戦ツアー実施
12月◆オリジナルサウンドCD 『PANTA RHEI』リリース
近藤等則氏によるダイナミックなトランペットソロアルバム。


1994年
 この年、RCIはサロン文化の実践をめざして大田区山王へ移転。「5月の風/ときめきと安らぎ」をコンセプトとした「RCI山王倶楽部」を開設する。これにより、メンバーが日常的に集える場を得ると同時に、各種イベントやクリスマスパーティーの開催など、様々な活動の拠点を築いた。
 サロン開設に伴い、年間特典を一新。よりリアルな表現をめざして『CHALLENGE』をビデオ化し、新たな読み物として『RCIジャーナル』を発行。また、感動の旅をプロデュースする独自の旅行カウンター「RCIコンパス」を設置するなど、RCIはヴィジョンの実現へ向けて、新たな一歩を踏み出す。
 そんな折、衝撃の一報が届く。世界中を震撼させた、アイルトン・セナの死。親友を失った桜井の悲しみは計り知れないが、しかし、そこで立ち止まることは許されなかった。何百、何千と寄せられるセナファンからの手紙、「彼のために、何かしなければ」という思い……。RCIは、セナのスピリットを未来に伝えるため、モニュメント「ローレッタ」を製作。続いて「セナのふるさとを訪ねる旅」を実施。そして、彼の真摯な生き様を鮮明に物語る『パーソナルトークビデオ』の制作など、何かに突かれるように動いた1年だった。

3月◆テーマディスカッション 第2回全国ミーティング開催
 前年の「未来論」に続いて、ひとりひとりの生き方から未来を探る「ニューライフスタイル」をテーマに掲げる。
4月◆RCIオフィスが、品川区池田山から大田区山王に移転
5月◆アイルトン・セナ死去 
 世界中が悲しみに包まれる。『CHALLENGE』の撮影のため、モナコを訪れていた桜井はセナのモニュメント制作を決意。彫刻家・菊竹清文氏が即座に制作に取りかかる。
6月◆RCI山王倶楽部オープン
 ジョー・ホンダ フォトライブラリーやブックライブラリー、F1ビデオコーナーやヴェネツィアングラス展示販売など、ここでしか味わえない楽しみがいっぱいのスペースとなる。
◆RCIコンパス開設
 RCIに旅のプロフェッショナルが常駐し、ツアーだけでなく、個人旅行の相談から企画までトータルにカバー。新たな旅のかたちを提案していく。
◆RCI山王倶楽部オープニングイベント開催
 深井克則氏のピアノ演奏に包まれながらの3日間、計4回のイベントに全国から総勢120名のメンバーが駆けつけ、楽しい語らいのひとときをすごす。
7月◆セナ・モニュメント「ローレッタ」完成
◆「ローレッタ」披露&「セナを語る会」開催
 全国のセナを愛する人々の基金により、彼が優勝した41のサーキットから成る二体一対のモニュメントを菊竹清文氏が制作、谷口江里也氏が命名。「ローレッタ」は、その後RCIが制作するセナ関連のグッズやイベントのシンボルとなる。また、「セナを語る会」には基金の参加者をはじめ、セナを偲ぶ多くのファンが全国から駆けつけた。
◆セナのふるさとを訪ねる旅実施
 桜井を団長に50名のメンバーが参加。セナの遺族に「ローレッタ」を届け、セナのゆかりの地を巡る2泊6日のツアーを決行した。その後もこの旅への要望は強く、96年まで毎年恒例の行事となる。その間に、セナファミリーとの交流はもとより、無数の出会いと感動のドラマが記されていった。
8月◆『CHALLENGE 11/夢よりも確かに』発行
◆『CHALLENGE 12/サロン誕生』発行
 セナ追悼ビデオとして、セナ不在のモナコGPと「セナのふるさとを訪ねる旅」をドキュメントした『夢よりも確かに』、そして、陣内秀信氏の案内で新しい時代のサロンを模索する『サロン誕生』の二巻を同時発行する。
 桜井淑敏著『覇者は何処へ』発行
 桜井淑敏著『ファーステスト・ワン』増補版発行
9月◆山王倶楽部初のイベント/ジョー・ホンダ 「思い出の一枚を語る」開催
10月◆アイルトン・セナ・メモリアルコレクション発売
 10イヤーズポートレート、パーソナルトークビデオ3巻セット、メモリアルポスター、メッセージTシャツなど。
◆山王倶楽部セミナーイベント/桜井淑敏、岸井成格「日本の政治、マスコミの功罪を斬る!」開催
11月◆アイルトン・セナ メモリアルペンダント発売
12月◆山王倶楽部クリスマスパーティー開催
 RCI初のクリスマスパーティーは「ロマンチックで親しみやすい」と好評。以後毎年恒例のイベントとして定着する。
◆ミア・ローレッタ発売
 「ローレッタ」の精巧なミニチュアを100個限定で制作。
◆アイルトン・セナ オフィシャルカレンダー 発売
 セナの遺族と多くのセナファンの要望に応え、1999年までの5年間、「5イヤー・カレンダーシリーズ」と命名したセナのカレンダーを制作し続けることを決意。

1995年
 阪神大震災、地下鉄サリン事件が起こり、自然の力の大きさと人間の無力感、人間性への不信感が蔓延し、日本中が重苦しい空気に包まれる。
 そんな中、RCIは改めて「人として生きることの意味」を問う。『CHALLENGE 13』ではアムステルダムに住む近藤等則氏を訪ね、「地球人として生きる」ためのヒントを探り、 14では谷口江里也氏と共にバルセロナへ飛び、ピカソ、ミロ、ガウディを題材に、人間だけが持つ不思議な力「創造と表現」の源泉を見つめた。そして、これと同じテーマで山王倶楽部セミナーを開催。谷口氏の「表現とはつまり、自分と世界を、今よりほんの少しだけ、より美しい方へと変化させる行為のこと」というこの言葉は、変化を恐れ、夢見ることを忘れたこの時代に、一筋の光を差すかのように優しく響いた。
 この年の年末には、震災の傷跡が残る神戸に桜井とスタッフが赴き、クリスマスパーティーを開催。メンバーとの交流を深めると共に、被災者へ祈りを捧げ、復興を願った。
 一方、F1界は、セナの死後、レースの安全性を追求するが、今ひとつ精彩を欠いていた。その中でシューマッハーがひとり鬼神の走りを見せ、2年連続でチャンピオンを獲得する。

2月 桜井淑敏著/福田和也構成『世界との対決』発行
4月◆テーマディスカッション 第4回全国ミーティング開催
 活動の4年目は『表現と創造〜アーティスティックな関係をめざして〜』をテーマに掲げる。
◆アイルトン・セナ パーソナルトークビデオ 4巻セット『未来へのメッセージ』完成
 新たに制作したスペシャルバーション『風のなかのセナ』を加え、ビデオ『未来へのメッセージ』が4巻セットとして完結した。
◆アイルトン・セナ メモリアル展 「未来へのメッセージ」開催
 「ローレッタ」展示、ジョー・ホンダ セナ写真展、パーソナルトークビデオ『未来へのメッセージ』の上映と桜井淑敏講演会を銀座山野楽器ホールで開催する。オウム事件の最中にもかかわらず、全国から多数のファンが訪れた。
7月◆山王倶楽部セミナーイベント/谷口江里也 「表現と創造」開催
 4回連続のセミナーイベントを開催。第1回「表現と創造とは何か」、第2回「感じること」、第3回「考えること」、第4回「表すこと」を通じて、表現と創造の核心に迫るセミナーとなった。
9月◆アイルトン・セナ オフィシャルカレンダー 発売この年からゴールドの額装完全保存版となる。
◆グレート イヤーズ・コレクション発表
 F1が最も輝いた時代、1984年から1993年までの10年間をグレート イヤーズと名づけ、名ドライバーたちの額装フォト、プリントTシャツを発表する。
12月◆RCIメンバーズミーティング&クリスマスパーティー 神戸と東京で開催
◆『RCIジャーナル 』発行
 「RCIってなんですか?」と題し、RCIスタッフ内での論争を完全掲載。他にないからこそわかりにくい、RCIの存在意義を改めて考えてみた。
◆アイルトン・セナ オフィシャルカレンダー CD−ROM版発売


1996年
 薬害エイズ事件に怒りを覚え、援助交際に身をやつす女子高生に困惑する、日本の社会。それらの根底にあるものは、リアリティの欠如からくる、責任と自由の放棄である。
 そこでRCIは、身体で感じるリアリティの獲得を求め、「心のエンジンをドライブしよう」というスローガンを掲げる。その象徴的なイベントとして、「ヨーロッパ・リアル・ドライビング」ツアーを実施。参加者自らが車を駆って欧州2千キロ走破に挑んだ冒険と感動の旅は、『CHALLENGE 15』で全メンバーに発信された。
 また、5年間続いたテーマディスカッション活動は一旦終了し、メンバー自らが企画立案し、その実行までを行う「メンバーズアクティビティ」に移行。具体的な行為を通して、参加する人が元気になったり、感性や美意識が磨かれたり、知性が豊かになることをめざした様々なアクティビティがスタートした。
 発足から8年の時を経たこの年、桜井はエッセーの中でこう語る。僕にとってのRCIは、まさに「人間に学び、生命を考える場だった」と。そんな思いから発して、『CHALLENGE 16』は「RCIという街」と題し、メンバーズ・クラブのイメージを描いてみる。RCIはひとりひとりの心の中にある街。そこで培われていく確かさと美しさ、育まれていく豊かな関係――それが新文化の礎になっていくのだと。

3月◆テーマディスカッション 第5回全国スペシャルミーティング開催
4月◆RCIメンバーズアクティビティスタート
5月◆セナのふるさとを訪ねる旅、ファイナルツアー実施
 47名の参加者は、姉ヴィヴィアンヌさんや「ローレッタ」と再会。セナ財団の援助を受ける子供たちとふれあうなど、セナへの愛とセナからの愛が今も息づくブラジルを体感する。
6月◆RCIシンボリックピンバッジ発売
◆ヨーロッパ・リアル・ドライビング・ツアー実施
 67名の参加者が27台のメルセデスに分乗しアウトバーンを南下。ロマンチック街道を走り抜け、アルプスを越えて、最終地点モナコGPコースをパレードランするという、RCIならではの冒険と感動の旅を実施。RCIブレーンの谷口江里也、近藤等則、新藤信らの力強いサポートを受けて、ミニライブや詩の朗読会など、アーティスティックなイベントも満喫した。
7月◆メンバーズアクティビティ第1弾、映画『地球交響曲』自主上映会 福岡で開催
8月◆山王倶楽部を中心にした4つのメンバーズアクティビティが一斉に立ち上がる
◆山王倶楽部セミナーイベント「美」第1回/谷口江里也&桜井淑敏「美と美意識をめぐるトーク」開催
9月◆モナコGPメモリアルカレンダー 発売
◆山王倶楽部セミナーイベント「美」第2回/陣内秀信「イタリア・ヴェネト州に見る美しい生活」開催
10月◆CD−ROM 「桜井淑敏F1メモリアル 」発売
11月◆メンバーズ・アクティビティ「RCIメンバーによるF1写真展」大阪で開催
12月◆山王倶楽部クリスマスパーティー「花と詩」開催
◆RCIメンバーTシャツ発表
 桜井淑敏&谷口江里也 対話集『セナ』発行


1997年
 RCIメンバーズクラブのヴィジョンがリニューアルされ、新たに「挑戦、創造、美、愛」の4つのキーワードを掲げる。それに伴い、入会特典と年間特典を刷新し、RCIブック『クアトロスタジオーニ』が年4回発行される。『クアトロスタジオーニ』は、RCIのヴィジョンに賛同し、支援するブレーンの面々による多彩な連載エッセイやメンバー紹介コーナー、各種情報などを満載したRCIならではの文化的季刊誌となる。また、レーシングコミュニケーションの内容をさらに充実させ、ファイリング方式も、より使いやすいブック型バインダーに変わった。
 一方、RCIは突然山王のマンションを退去せざるを得なくなり、4ヶ月間に渡って移転先を探すはめに。一時は危機的な状況に立たされるが、最終的には同じ山王の緑豊かな庭付きの一戸建てに落ち着く。サロン設立当初から、訪れる人が心を解き放せるような空間づくりをめざしていたRCIにとって、まさに「災い転じて福となす」であった。
 慌ただしい1年となったが、山王倶楽部の新規オープンと同時に、セナのスピリットを伝える新スペースとして「アイルトン・セナ ミニギャラリー」を開設した。
3月◆RCIブック『クアトロスタジオーニ』創刊
7月◆RCIオフィス&山王倶楽部移転
8月◆RCI山王倶楽部&アイルトン・セナ ミニギャラリー新規オープン
 ローレッタをはじめ、セナの思い出の品々や写真を展示し、オフィシャルグッズ販売も行う「アイルトン・セナ ミニギャラリー」を入場無料のスペースとして新設。
◆RCIコンパス、新体制でスタート
 RCIコンパスの旅行業務をジャパン・ツアー・システムから近畿日本ツーリストへ移行し、RCIコンパスデスクとして再スタートを切る。
◆ジャック・ヴィルヌーブ・オフィシャルカレンダー 発売
9月◆『CHALLENGE 17/心に咲く花』発行
 RCIの日常と桜井の心情を映し出しながら、本当に大切なもの、未来に向けて、ひとりひとりが何から始めればいいかをメッセージする。
12月◆山王倶楽部クリスマスパーティー開催
 山王倶楽部が移転して初めてのイベント。メンバーの参加意識の高まりも感じられ一軒家でこそ実現可能な温もりのあるホームパーティーとなる。


1998年
 年明けのハイライトは長野冬季五輪、夏はフランスのワールドカップサッカーと、国中が一丸となってスポーツの祭典に沸いた。F1では、トレッド幅縮小と溝付きタイヤ導入というレギュレーションの変革が行われ、それに伴ってブリヂストンとグッドイヤーによるタイヤ戦争と、復活したマクラーレンとフェラーリを駆るシューマッハーによる激しいチャンピオン争いが展開される。
 一方、国内の情勢はいよいよ混迷を深めていく。金融関連企業の倒産と官僚不祥事が相次ぐばかりか、世界からも日本の沈滞は近隣アジア諸国の不況の根源と糾弾される始末。おまけに戦後の一党支配体制を築いた自民党が七月の参議院選挙で大敗したにもかかわらず、肝心の行財政改革は一向に進む気配がない。私たちを乗せた船は、まるで荒波にもて遊ばれる木の葉のよう。果たしていつまで、そしてどこまで、この大海をさまよい続けるのだろうか……。
 1998年9月1日、RCIは創立10周年を迎えた。この混迷の時代、あらゆる分野に変革への待望が高まる中で、新文化創造をめざすRCIメンバーズクラブの存在は、ますます重要なものとなり、その真価が問われている。なぜなら、”私たち“はすでに動き始めている。そして”私たち“は、今や気がついているのだ。RCIという存在そのものが”ひとつの夢“であり、次なる時代のヴィジョンだということを――。
 今、本当に大事なことは、既存の価値観や枠組みからではなく、私たちひとりひとりが「心の確かさ」から出発し、未来への道を踏みしめていくことだ。そこに新たな文化を生み出すグラウンドをつくることだ。そして、人が人として、また、この地球という星の生命体の一員として、より良いあり方と関係を築き、新しい現実を創り出していくことだ。
 RCIはメンバーと共に、感動と、変化と、成長の歴史を刻みながら力強く歩んでいきたい。